「相続税は、お金持ちだけに関係するもの」と思われていませんか?
実は、自宅や預貯金、生命保険など、ごく普通の家庭にある財産も相続税の対象になることがあります。さらに、意外な落とし穴として「これが財産になるとは知らなかった」「申告しなくてよいと思っていた」という認識のズレが、申告漏れや相続人間のトラブルにつながるケースは少なくありません。
このコラムでは、相続税の対象となる財産・対象外となる財産を具体例とともに整理します。
■相続税の対象となる財産
▍① 現金・預貯金
| 主な例 | 注意点 |
| ・普通預金 ・定期預金 ・外貨預金 ・タンス預金 | 【名義預金に注意】 子や孫名義の口座でも、通帳・印鑑を被相続人が管理していた、口座の存在を名義人が知らなかったなどの場合は「名義預金」として被相続人の財産に含まれます。形式的な名義ではなく、実態で判断されます。 【タンス預金も課税対象】 税務調査では被相続人・相続人の過去の預金の流れを確認するため、申告漏れが指摘されることがあります。 |
▍② 土地・建物などの不動産
| 主な例 | 評価・注意点 |
| ・自宅(土地・建物) ・賃貸アパート・マンション ・農地 ・山林 ・別荘 | 評価は売買価格ではありません。土地は「路線価方式または倍率方式」、建物は「固定資産税評価額」で評価します。 【小規模宅地等の特例】 自宅の土地は、一定の要件(同居・家なき子など)を満たすと評価額を最大80%減額できます。適用の可否と要件の確認が非常に重要です。 |
▍③ 株式・投資信託などの金融資産
| 主な例 | 注意点 |
| ・上場株式 ・投資信託 ・ETF ・REIT ・国債 ・社債 ・非上場株式 | ネット証券口座の把握漏れに注意が必要です。相続人が口座の存在を知らないケースが増えています。 非上場株式は評価方法が複雑で、会社の規模・財務状況によって評価額が大きく異なります。事業承継と一体で検討が必要です。 |
▍④ 生命保険金
死亡保険金は、受取人が保険契約に基づいて直接受け取る「受取人固有の財産」です。そのため民法上の遺産ではなく、遺産分割の対象にはなりません。しかし相続税法上は課税対象となります。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 課税される税目 |
| 被相続人 | 被相続人 | 相続税(非課税枠あり) |
| 受取人 | 被相続人 | 所得税・住民税 |
| 契約者・被保険者・ 受取人がすべて異なる | 被相続人 | 贈与税(税率が高いため注意) |
※ 相続放棄をした場合でも死亡保険金は受け取れますが、非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用されません。受取金額によっては相続税の負担が生じます。
▍⑤ 死亡退職金
被相続人の死亡後に支給が確定した退職金も相続税の対象となります。生命保険金とは独立して非課税枠が設けられています。
▍⑥ 自動車・貴金属・骨董品などの動産
| 主な例 | 注意点 |
| ・自動車 ・貴金属 ・宝石 ・高級腕時計 ・美術品 ・骨董品 | 購入価格ではなく、相続時点の時価で評価します。「古いから価値がない」と思っていても、骨董品や高級時計は高額評価となることがあります。 |
▍⑦ ゴルフ会員権・リゾート会員権
ゴルフ会員権は「権利(財産権)」であり、動産ではありません。預託金制・株主制などの種類によって相続税評価方法が異なります。ゴルフクラブの規約によっては、死亡によって会員資格が消滅するケースがあります。その場合は相続財産になりません。必ず規約を確認してください。
▍⑧ 貸付金・未収金などの債権
| 主な例 | 注意点 |
| ・親族 ・知人への貸付金 ・会社への貸付金 ・売掛金 ・未収家賃 ・未収配当金 | 回収可能性があるものは相続財産となります。親族への貸付金は、借用書や返済実績がなくても原則として財産(債権)として評価されます。「もらったつもりだった」では通用しない点に注意が必要です。 |
▍⑨ デジタル資産(暗号資産・電子マネーなど)
| 種類 | 取扱い |
| 暗号資産(仮想通貨) | 相続時の時価で評価(取引所の終値等)。 |
| 電子マネー残高 (QR決済・交通系等) | 現金と同様に残高1円=1円で評価。ただし種類・規約によって相続手続きができないものもあり、確認が必要。 |
| ネット証券・ネット銀行口座 | 口座内の残高・有価証券は相続税の対象。存在自体を把握していない相続人が多い。 |
※ IDやパスワードの管理方法を家族と共有しておく「エンディングノート」の活用が有効です。
■相続税の対象とならない財産
| 財産の種類 | 内容 | 注意点 |
| 祭祀財産 (墓地・仏壇等) | 墓地・墓石・仏壇・仏具・神棚など、先祖の祭祀に用いる財産 | 純金製の仏具など投資目的と判断されるものは課税対象になる場合あり |
| 生命保険金の 非課税枠部分 | 500万円×法定相続人の数までの部分(相続人が受け取った場合のみ) | 相続放棄した人は非課税枠を使えない |
| 死亡退職金の 非課税枠部分 | 500万円×法定相続人の数までの部分(上記と独立して適用) | 相続放棄した人は非課税枠を使えない |
| 国・地方公共団体等 への寄附財産 | 相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに国・地方公共団体・特定の公益法人へ寄附したもの | 寄附先が特定の公益法人である必要あり |
■忘れがちなマイナスの財産「債務控除」
相続税の計算では、プラスの財産から「債務」と「葬儀費用」を差し引くことができます。これを「債務控除」といいます。
| 控除できるもの | 主な例 |
| 債務 | 借入金・住宅ローン・未払い医療費・未払いの税金(所得税・住民税等)・家賃未払いなど |
| 葬儀費用 | 通夜・告別式の費用、火葬費用、お布施、遺体搬送費用など(香典返し・墓石購入費は対象外) |
※ 相続放棄した相続人は債務控除を適用できません。
■まとめ:特に注意したい5つのポイント
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。財産の全体像を早めに把握することが、円滑な相続手続きの第一歩です。「自分には関係ない」と思わず、まずは財産リストの作成から始めてみてください。

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